新型コロナウイルスでうつ病が増加?症状や対策とは

(マオメディカルクリニック 院長 植月 俊介 監修)

「最近、気分の落ち込みが激しい」「仕事や家事が手につかない」ということはありませんか。

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、コロナうつという言葉も生まれ、抑うつ状態になる人が少なくありません。今回は、ネットやメディアで話題のコロナうつの症状や対策などをご説明します。

新型コロナウイルスによってうつ病が増加?

新型コロナウイルスの感染が拡大している中、うつ病など精神疾患の罹患者が増加している傾向にあります。全国の医師へ行ったあるアンケート調査では、回答した医師のうちの4割近くが、新型コロナウイルスによる環境の変化で増加、または悪化した疾患に精神疾患を挙げています。

またもともと、うつ病などの精神疾患を患っている人は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、症状が悪化しやすいと考えられています。 うつ病は厳しい状況が続いて2~3ヵ月後に症状として現れることがあるため、今症状がない場合でも今後発症する可能性があります。

新型コロナウイルスとストレス

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くの人に仕事や家庭における環境変化がみられました。新型コロナウイルスの実態は未だ解明されておらず、いつ収束するかなどの見通しもつかない状況で、不安や環境の大きな変化によるストレスにさらされた方もいることでしょう。

またメディアなどでよく見かける「コロナうつ」は医学的に定義されたものではなく、新型コロナウイルスによる自粛生活や感染への不安があることから、コロナウイルスに関連したストレスによって心身に不調が現れる状態のことを指しています。

今回はコロナの影響でうつ病についてご興味をいただいた方に、「うつとは何か」から「コロナうつと言われるものは何なのか」をよりわかりやすく説明するため、うつ病の分類を用います。

うつ病は発症原因によって、主に以下の3つのタイプにわけられます。

外因性

脳の症状(アルツハイマー型認知症、神経変性疾患など)や体の症状(甲状腺機能低下症、肝臓病など)が原因で発症すると考えられています。脳血管障害、脳腫瘍が原因の場合には、器質性うつと診断されることがあります。

心因性

ストレスや精神的な負担などが原因で発症すると考えられています。不安障害や強迫性障害、適応障害などが含まれ、複数の症状が同時に現れる場合があります。特定の大きなストレスに対して発症する場合に、反応性抑うつと呼ばれることがあります。

内因性

外因性、心因性のどちらの場合でもなく、脳にある何らかの原因によって発症すると考えられています。体質や遺伝的なものという考えもあり、ストレスなどさまざまなものが重なって発症すると言われています。コロナうつと言われるものは、上記の分類に照らし合わせた場合、反応性抑うつと考えることができます。

コロナうつの症状

コロナうつの目安となるうつ病や抑うつ状態の症状には、主に以下のようなものがあります。

  • やる気が出ない
  • 仕事に行きたくない
  • 気分が落ち込みがちだ
  • イライラする
  • 悲観的になる
  • 睡眠障害
  • 頭痛
  • 下痢、便秘

コロナうつによる病院への相談

コロナうつによる病院受診の目安として、主に以下の2つが考えられます。

抑うつ気分が2週間以上続く

うつ病の診断基準の中に、2週間以上にわたり抑うつ気分が継続しているという項目があります。自粛生活や不安によって一時的に気分の落ち込みがみられる場合でも、2週間以上続くことは少ないと考えられます。

しかし、うつ病の場合には2週間以上症状が続き、日常生活にも支障が出ることがあります。仕事に行けない、家事が手につかないなど、普段の生活に変化が現れた場合は注意が必要です。

周囲から様子の変化を指摘される

うつ病の患者さんは行動面に影響が出ることがあり、周囲の人から受診を勧められて病院を訪れるケースもあります。ご自身の目安として、なんとなくボーっとして焦点が合わない、動作や話し方が遅くなるなど、周りの人にいつもと違うことを指摘される場合は病院受診を検討しても良いかも知れません。

コロナうつは、インターネットやメディアが作り出した言葉で定義が明確に定められていないこともあり、コロナうつとうつ病の線引きはありませんが、次のような症状が毎日のように続く場合は受診を検討しましょう。

  • 気分が落ち込む、憂鬱である
  • 食欲がない、または過食気味である
  • 夜眠れない、または過眠気味である
  • 気力がわかない
  • 以前は楽しかったことも楽しめない、または興味がもてない
  • 仕事に行けない、家事が手につかない
  • 集中力が続かない
  • 自分を責めすぎる
  • 死について何度も考えてしまう

上記のチェック項目はあくまで目安であり、医師の診察に代わるものではありません。2週間以上にわたって抑うつ気分や上記の症状が続く場合は、早めに心療内科や精神科へ相談することをおすすめします。気になる症状や心配事がある場合も、病院に行くこと自体で感染するのではないか、感染経路になってしまうのではないか、と不安を感じるということもあるかもしれません。

現在、それぞれの病院やクリニックでは、例として以下のような感染症対策に努めています。

  • アルコール除菌の徹底
  • スタッフや患者さんのマスク着用
  • 待合室への人数制限、待合室の拡充
  • 電話診療、オンライン診療の実施
  • 空気清浄機の導入、室内換気の徹底
  • 受付にビニールカーテンを設置
  • ソーシャルディスタンスの順守

病院受診にあたって不安な点がある場合には、各医療機関へ事前に電話で確認することをおすすめします。

コロナうつの対策

コロナうつの予防対策には、主に以下のようなものが考えられます。

規則正しい生活をする

自粛生活や在宅勤務などにより、これまでの生活リズムが崩れがちになっているかもしれません。生活リズムが不規則になると、体内時計が乱れ、心身の不調につながる可能性があります。起床時間や就寝時間を決め、できるだけ一定のリズムで生活することを心がけましょう。

適度な運動をする

コロナうつの予防に限らず、適度な運動は心身の健康にも良い影響があると考えられています。掃除をする、室内でストレッチを行う、散歩をするなど、できる範囲で体を動かしてみましょう。

また普段から運動を習慣にしていた場合は体を動かす機会を失い、ストレス強くなっているかもしれません。無料の動画をはじめ、フィットネスジムなどのオンラインレッスンも公開されているため、活用してみるのもいいでしょう。

新型コロナウイルスの情報と距離を置く

新型コロナウイルスの情報は、テレビやインターネット、SNSやラジオなどさまざまな媒体から流れてきます。その中には正確な情報も含まれますが、誤った情報もあり、不安を招きやすいといえます。

新型コロナウイルスの情報に触れる時間を決め、テレビや携帯を見ない時間を作るなど、意識的に情報と距離を置くようにしましょう。

興味のあることを始める

自分の趣味や興味のあることを調べる、またはチャレンジしてみると新型コロナウイルスへの不安軽減だけでなく、気分転換につながります。好きな音楽を聴く、好きなアロマを焚く、読みたかった本を読むなど、取り組みやすいものから始めてみるといいでしょう。

周囲の人とのコミュニケーションを心がける

自粛生活や在宅勤務などにより、周りの人とのコミュニケーションが少なくなったこともストレスになっている場合があります。友人とオンラインで話す時間を作るなど、無理のない範囲でコミュニケーションをとることで心の安定が図りやすくなるかもしれません。

自分の体と向き合い、コロナうつを予防しよう

新型コロナウイルス感染拡大に伴ったさまざまな環境の変化により、一時的に心が不安定になることがあります。 2週間以上不調が続くなどの場合、病院への受診をおすすめします。新型コロナウイルスを原因としたコロナうつの治療はできませんが、医師からのアドバイス等により症状を軽減できる可能性があります。

不安なことがありましたら、当院へご相談ください。