男性更年期障害とは?原因と治療方法について

男性更年期障害とは?原因と治療方法について

(マオメディカルクリニック 院長 植月 俊介 監修)

「更年期障害」といえば、女性の閉経前後にみられる心身の不調のイメージが強いかもしれません。しかし最近では、男性が更年期障害に悩んでいるというケースも増えてきました。そこでこの記事では、男性更年期障害の症状や原因、治療法などをご説明します。

男性更年期障害とは

男性更年期障害は男性ホルモンであるテストステロンの低下により、心身にさまざまな症状が引き起こされる病気のことをいい、「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」とも呼ばれています。また女性の更年期障害は閉経前後の10年間に発症する一方で、男性更年期障害では主に40歳代以降に目立ち始めます。ただしホルモンが低下する期間や程度、その時期に個人差があるため、中には60歳、70歳になってから症状を訴える方もいます。また女性の更年期障害はホルモンバランスが安定してくると症状が落ち着くことがほとんどですが、男性更年期障害は長期にわたって症状と付き合い続ける可能性が高いことも特徴です。

男性更年期障害の症状

テストステロンには骨や筋肉を増強する、性機能を正常に保つ、理解力などの認知能力を高めるはたらきなどがあります。また新しいことへチャレンジする精神力や、リスクを恐れずに決断し行動する力なども男性ホルモンが大きく関わっています。男性ホルモンは全身に作用しているため、テストステロンが低下することで心身両面に主に以下のようなさまざまな症状が現れます。

身体症状

  • 筋力低下
  • 勃起不全(ED)
  • 全身倦怠感
  • 多汗
  • 骨粗しょう症
  • 肥満
  • 頻尿

【精神症状

  • イライラ
  • 無気力
  • 不眠
  • 性欲低下
  • 記憶力、集中力の低下
  • 疲れやすい

 

男性更年期障害とテストステロン 

テストステロンは脳からの指令の下、約95%は精巣、残り約5%が副腎で合成され、血液中に分泌されています。血中のテストステロンのほとんどは性ホルモン結合グロブリン(SHBH)と結合して活性がなく、実際に作用して性機能を正常に保つはたらきなどを担うのは「遊離型テストステロン」です。遊離型テストステロンは総テストステロンと比較し、年を重ねるにしたがって減少しやすい傾向があります。

テストステロンは分泌のピークを迎える20歳代から徐々に低下していきます。男性更年期障害は加齢に伴うテストステロンの低下に加え、何らかの原因でテストステロンが急激に低下することにより発症します。テストステロンが低下する原因として、代表的なものはストレスです。40歳代~60歳代は仕事や家庭、親の介護などさまざまなストレスがかかりやすい時期であるため、男性更年期障害の症状に悩む方が多くなると考えられます。

また近年ではテストステロンの低下により、動脈硬化や肥満、心筋梗塞や糖尿病などのリスクやうつ病になる可能性を高め、寿命に関係することもわかってきています。心身の健康を維持しQOL(生活の質)の高い生活を送るためにも、テストステロンの低下を防ぐことが大切です。テストステロンの分泌量を増やすには、主に以下のような生活習慣の改善が有効とされています。

【食事

テストステロンの主原料はコレステロールです。またテストステロンの産生には良質なアミノ酸が必要なため、バランスのよい食生活を心がけましょう。特に摂取するとよいといわれるのが、ニンニクやタマネギなど、いわゆる「精がつく」食べ物です。ニンニクやタマネギに含まれる含硫アミノ酸がテストステロンの産生を上げるはたらきがあります。またニンニクはタンパク質と一緒に摂ることで、より効果が発揮されます。おろしニンニクやガーリックステーキなどがオススメです。

運動

運動や筋トレをすることはテストステロンの産生を促し、ストレス解消にもつながります。また基礎体力の向上や糖代謝の改善などさまざまなメリットがあります。運動習慣がない方も、腕立てやスクワットなどできることから始めてみましょう。

睡眠

自律神経には日中など活動的なときにはたらく交感神経と、リラックスしているときなどにはたらく副交感神経があります。男性ホルモンは睡眠中の副交感神経が優位のときに分泌量が増えるため、睡眠不足になるとテストステロンが低下しやすい状態となります。忙しい毎日でも、起床後は日光を浴びて体内時計をリセットする、寝る前にPCやスマホを触らないなど睡眠環境を整える工夫をしてみましょう。

男性更年期障害の診断 

血液検査で、遊離型テストステロン値をチェックします。前立腺肥大症やがんの有無も治療に関わるため、超音波検査や前立腺がん検査(PSA測定)も行います。

血中の遊離型テストステロン値が8.5pg/ml未満の場合に、男性更年期障害の可能性があります。8.5pg/ml以上~11.8pg/ml未満は男性更年期障害のボーダーライン(男性ホルモン低下傾向群)とされます。ただし数値は目安であり、数値がよくない場合でも症状がほとんどない方もいる一方、数値が正常範囲内でも症状に悩んでいる方もいます。一人ひとりの症状に応じて対応していくことが重要です。

またAMSスコアを用いて評価し、その合計点や問診票の結果をもとに男性更年期障害の可能性を考えます。

 

【チェックリスト

下記の17項目から、該当する症状を選択しましょう。

 

症状

なし

軽い

中等度

重い

非常に重い

1

総合的に調子がよくない

1

2

3

4

5

2

筋肉や関節に痛みがある

1

2

3

4

5

3

発汗がひどい

1

2

3

4

5

4

睡眠のことで悩んでいる

1

2

3

4

5

5

よく眠くなる、しばしば疲れを感じる

1

2

3

4

5

6

イライラする

1

2

3

4

5

7

神経質になった

1

2

3

4

5

8

不安感がある

1

2

3

4

5

9

体の疲労や行動力の低下を感じる

1

2

3

4

5

10

筋力の低下を感じる

1

2

3

4

5

11

憂うつな気分になる

1

2

3

4

5

12

絶頂期は過ぎたと思う

1

2

3

4

5

13

「力尽きた」「どん底」にいると感じる

1

2

3

4

5

14

ひげの伸びが遅くなった

1

2

3

4

5

15

性的能力の衰えがある

1

2

3

4

5

16

朝立ち(早朝勃起)の回数が減少した

1

2

3

4

5

17

性欲が低下している

1

2

3

4

5

正常 :~26点
軽症 :27~36点
中等度:37~49点
重度 :50点~

 

男性更年期障害の治療法

症状が軽度な場合、その症状に応じた薬や漢方薬などを使用します。また生活習慣の改善も有効であるため、並行して治療を進めます。

  • 漢方薬…「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は、疲れやすい、だるいなどの症状に効果が期待できます
  • 抗不安薬や抗うつ薬…うつ症状など心の症状がみられる場合に処方します。
  • ED治療薬…勃起症状がある場合にPDE5阻害薬を処方します。

症状が重い場合には、以下のように男性ホルモン補充療法を行います。

  • 対象…がんや前立腺肥大症がなく、男性ホルモン値が低い方</li>
  • 種類…注射剤、経口剤、皮膚吸収材</li>
  • 保険適応…現在の日本では、注射剤(エナント酸テストステロン)のみ</li>
  • 方法…2~3週間に1回の通院で男性ホルモンを投与

治療は短い期間で終える方もいれば、数十年にわたって投与し続ける方もいます。効果には個人差がありますが、筋肉量や骨密度、気分や性欲の改善などが期待でき、注射直後から効果を実感できます。また、皮膚色調変化、肝機能障害、精巣萎縮、精子減少、脱毛多血症などの副作用の可能性もあるため、医師と十分な相談の上、治療を進めて下さい。

男性更年期障害は治療で改善できる

男性更年期障害は男性ホルモンであるテストステロンの急激な低下により、誰にでも発症する可能性があります。当院では、泌尿科・内科、及び精神科の両面から男性更年期障害の治療が可能です。気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。