頻尿の原因と治療方法について

頻尿の原因と治療

(マオメディカルクリニック 泌尿器科医長 別所 英治 監修)

「最近何だかトイレが近い」「頻繁に尿意を感じてしまい、仕事に集中できない」など、頻尿でお悩みではありませんか?

トイレに行く回数が多く、尿意が近い状態が続いている場合、頻尿の可能性があります。
今回は頻尿の定義や原因、代表的な治療方法についてご説明いたします。

頻尿の定義について

健康な大人の1日の排尿量は日中約4~6回、夜間は0~2回前後が一般的だといわれます。
一方で排尿量は700ml~3L程度と個人差があります。

起床後、寝るまでの間の排尿回数が7回以上、夜間の睡眠時に3回以上トイレに行く場合は、頻尿の可能性があります。

頻尿は昼夜問わず起こることが多いですが、昼間のみ、または夜間のみというケースもあります。夜間に何度も尿意を感じ、トイレに行く場合は夜間頻尿といわれます。

頻尿の原因は多岐にわたります。水分摂取量が多かったり、アルコールやカフェインなど、排尿を促進するものを取ったりすることが原因のひとつです。加齢におってトラブルが増える傾向にありますが、年齢や性別問わず症状が現れると言われています。

排尿量は個人差も大きく、水分摂取量や環境によっても異なるため、生活に支障を感じた場合は、泌尿器科の受診をおすすめします。

男性の頻尿は前立腺肥大症の可能性が

50歳以上の頻尿の原因で多いのが、前立腺肥大症です。前立腺とは男性にのみあるもので、精液の一部に含まれる前立腺液をつくる生殖機能に深い関係のある臓器です。前立腺は膀胱の出口に位置し、尿道を取り囲んでいます。

その前立腺が加齢とともに大きく肥大し、尿道を圧迫することでさまざまな排尿トラブルが生じます。頻尿をはじめ、尿の勢いが弱くなったり、なかなか尿が出なくなる等の症状が見られます。

前立腺肥大症は尿を溜める蓄尿症状にも影響を及ぼします。急に我慢できないほどの尿意を感じる「尿意切迫感」といわれるものです。場合によっては、トイレに行くのが間に合わず、尿がもれてしまうこともあります。

加齢とともに前立腺が肥大する原因はわかっていません。ただ、男性ホルモンの働きが関係しているのではないかと考えられています。

糖尿病が原因の頻尿も

糖尿病も頻尿を引き起こす場合があります。糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血糖値が高くなる病気です。糖尿病は喉が渇きやすくなる傾向があるため、水分を多く摂取してしまい頻尿の原因になることもあります。

さらに、疾患が進むと排尿をコントロールする神経が障害を受け、膀胱の働きが上手くいかなくなる場合があります。そのため頻尿などの排尿トラブルが起きやすくなるのです。

これは神経因性膀胱と呼ばれ、糖尿病以外にも膀胱への神経を圧迫する腰部椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄(せきついかんきょうさく)症が原因で起こることもあります。

心因性の頻尿 、過活動膀胱やその他の疾患

膀胱・尿道に特に疾患がなく、一般的な尿量であるのにもかかわらずトイレに行きたくなるタイプの頻尿もあります。過活動膀胱と一般的には考えられます。

これは精神的な不安やストレスが原因となる心因性の頻尿です。重要な会議やプレゼンテーション、試験やデートなど緊張を強いられるとトイレに行きたくなる症状です。

ストレスや気持ちの落ち込みなど、緊張していることで頻尿になるため、リラックスしている時や睡眠中はトイレが気にならず、回数も多くないのが特徴です。

尿路に結石が形成される尿路結石症や、尿路感染である膀胱炎、前立腺炎でも頻繁に尿意をもよおす症状が出ます。まれに膀胱がんなどでも、膀胱刺激症状の1つとして頻尿があらわれるケースもみられます。

男性ホルモンのバランスが頻尿に影響している場合も

男性の方で頻尿以外になんとなく調子が悪い、気力がわかない、不眠や倦怠感といった症状がある場合は、実は男性更年期障害(LOH症候群)かもしれません。

更年期障害というと、女性に現れる症状として広く知られています。しかし男性も、男性ホルモンであるテストステロンの低下によって、さまざまな不調があらわれることがわかっています。

筋肉量の減少、内臓脂肪の増加をはじめ、勃起障害・性機能低下や頻尿等の体の症状、疲労感やイライラ、興味・意欲の減退、うつなどの心の不調に悩まされるのが、男性更年期障害の特徴といわれています。

頻尿の治療方法

頻尿の原因は多種多様です。患者様それぞれの症状をよく精査した上で、適切に治療を行っていきます。
水分のとり方や生活指導など排尿に関するアドバイスや、投薬による治療を開始します。

前立腺肥大症の場合の治療

まずは、国際前立腺症状スコア(IPSS)自覚症状を確認し、尿検査等の各種検査を行い、治療を決定します。

  • 薬物療法

    前立腺(平滑筋)が収縮による、尿道の圧迫を解除、尿を通りやすくする薬剤、前立腺を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減する薬剤の2種類の薬剤を中心に治療します。

  • 手術療法

    薬物治療を行っても、症状が十分改善されない、合併症など他の症状や疾患が考えられる場合に手術も選択肢となります。

  • 保存治療

    水分やコーヒーやアルコールの適度な摂取、刺激性食物の制限等を意識し、生活の改善に努めます。便通の調節、適度な運動、長時間の座位や下半身の冷えを避ける等々を変えることが症状の緩和につながるためです。

男性更年期障害の治療

男性更年期質問票(AMS:Aging males symptoms )で症状を確認、血中の男性ホルモン(テストステロン)の量を調べます。その上で、男性ホルモンの注射・塗布等の治療を開始するかを判断します。ただし前立腺肥大症の場合は、男性ホルモンの影響で進行してしまう可能性があるため、事前に前立腺の検診やPSA検査(前立腺がんマーカー)を調べておかなくてはなりません。

大きな疾患がない場合でも、頻尿によって行動範囲が限られたり、仕事や日常に支障をきたしたりするようであれば、生活の質の低下にもつながります。男性更年期を含め、頻尿に心因性の問題がある場合、メンタル面のケアも大切です。

当院では、泌尿器科はもちろん、男性更年期外来やメンズヘルス外来も開設しており、頻尿をはじめとするさまざまなご相談に応じています。また心療内科・精神科も併設し、身体的な診察に加えて、心の面での専門的な診療を行っていますので、お気軽に受診いただければと思います。