テストステロンが減るとどうなるの?【男性更年期障害の原因にも】

テストステロンが減るとどうなるの?【男性更年期障害の原因にも】

(マオメディカルクリニック 泌尿器科医長 別所 英治 監修)

「いくつになっても若々しくありたい」「体型を維持したい」でも前より元気がないし、なんだかお腹も出てきた気がする・・・。原因はテストステロンというホルモンが減ることらしいけれど、本当に関係あるの?

実は「ちょっと元気がないだけ」というのは男性更年期障害という深刻な病気の前ぶれかもしれません。

今回はテストステロンの働きや減少による症状や、男性更年期障害との関係について解説します。

テストステロンとは?

テストステロンとは、男性ホルモンの代表であり、筋肉質な体型やがっしりした骨格などいわゆる「男性らしさ」を構成するために重要な性ホルモンです。
思春期に急激に分泌量が増えることによりか身体や精神の発達に大きく影響し、「第二次性徴」と呼ばれています。
分泌量を年齢の推移で見ると、多くの場合は10から20代をピークに急激に増え、その後はゆるやかに山型のグラフを描くように減少します。

しかしテストステロンの減少には環境やストレスが大きく関わっており、40代以降急激に減少するケースも少なくありません。

一方で、80代を過ぎてもテストステロンの分泌量が40代の平均値をキープしている方もいるため、テストステロンの減少には個人差があります。

テストステロンの3つの重要な働き

1.筋肉や骨格の成長を促す
第二次性徴期に急に身長が伸びたり、声変わりやヒゲが濃くなるなどの作用は思春期にテストステロンが大量分泌されるために起こります。

2.性欲や性衝動を起こさせる、勃起のスイッチを入れる
フェロモンを発生させたり、骨盤神経に働きかけ勃起を促すなど性行動に必要な作用もテストステロンによるものです。

3.前向きな思考や高い集中力、やる気を働かせる
テストステロンは大脳に作用するため前向きな思考や決断力を働かせる作用があります。気力・やる気といった精神面にも影響を及ぼします。

これらがテストステロンの重要な働きです。男性にとって、とても重要なホルモンであることがわかります。

テストステロンが減少すると

テストステロンは男性の身体と精神の重要な部分に働いているため、減少すると様々な症状が現れます。
症状には個人差があるため、クリニック等でご自身の症状をしっかりチェックすることが大切です。

■ 性行動にまつわる症状
・性欲の減退、性的興奮の低下
・朝勃ちの減少

■身体的症状
・筋力の衰え、力が入りにくい
・腹部の脂肪増加(腹囲のあきらかな増加)
・メタボリックシンドローム(内臓肥満、高血圧、高血糖、脂質代謝異常の複合症候群)
・休んでも取れない疲れ
・頻尿、残尿感

■精神的症状
・やる気や集中力、記憶力の低下
・不安感による不眠、寝付きの悪さ
・イライラする、気分が落ち込む
・急に不安になる

■自律神経症状
・耳鳴りやめまい
・汗をかきやすい、のぼせ、手足の冷え
・動悸、息切れ

テストステロンの減少による症状の中でよく見られるのが性行動にまつわる変化、体型の変化、精神面の変化です。

見落とされがちなのが「自律神経失調症」の症状によくある
「めまいや頭痛」「発汗やのぼせ」「だるさや疲れやすさ」ですが、
こちらも大事なテストステロンの減少による症状です。

これはテストステロンの働きとは直接関係しないのですが、テストステロンが減少することでホルモンバランスが乱れ、交感神経と副交感神経の均衡がうまく取れなくなることで引き起こされると考えられます。
また糖尿病の既往のある男性にテストステロンの減少が認められる場合、血管疾患(動脈硬化など)の発症リスクが5倍もあるとアメリカの研究で発表されています。
*米国内分泌学会掲載文参照(https://www.m3.com/clinical/news/264437)

テストステロンが減少する原因

テストステロンは通常20代をピークに緩やかに減少していきます。
そのためテストステロンの減少による様々な症状もゆるやかに出現し、個人差はありますが「老化による変化」として受け入れている男性が多いようです。

しかし、テストステロンは年代問わず環境変化や人間関係によるストレスが原因で急激に減少することがあります。

というのも、私たちがストレスを感じると体内で抗ストレスホルモンの「コルチゾール」が分泌されストレスから身を守ろうとしますが、過剰に分泌され続けるとコルチゾールの製造元である副腎が疲弊します。

すると副腎で製造される「DHEA」というテストステロンの元となるホルモンが製造できなくなるのです。

そのため、過剰なストレスが「年代問わずに出現するテストステロンの減少による不調」の原因ととらえることができます。

つまりテストステロンが減少するのは「加齢」と「過剰なストレス」が大きく関係していると言ってよいでしょう。

テストステロンの減少と男性更年期の関係とは?

男性更年期障害とはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも言われています。
テストステロンの減少によって身体、精神的症状が出現する病気として近年広く認知されるようになってきました。

とはいえ女性の更年期障害と比べるとまだまだ認知度は低く、また女性の閉経のようなわかりやすい原因もないために他の病気と認識されてしまうことも少なくありません。

多くが40代以降に発症するものの、発症時期にも決まりはなく30代や70代で発症する場合もあります。
さらに発症期間も人によってバラバラで、テストステロンの減少に応じて80代以降まで続くこともあり、終わらない症状に苦しむ男性も多くいます。

男性更年期障害の症状は、精神面の症状が強い場合や、性機能に影響が大きい場合など個人差がありますが、初期症状は性機能に症状が出る場合が多いといわれています。

テストステロンが減少しているか調べるには

テストステロンが減少しているかを調べるためには、クリニックなどの医療機関を受診する必要があります。
男性更年期が疑われる場合にはまず問診や身体測定が行われ、テストステロンの減少による症状かそうでないかをチェックします。

それから症状の重症度を測るための専用の質問表が用いられますが、この段階ではテストステロンが減少しているかは確定できないため、確定診断として血液検査によるテストステロン値測定が行われます。
血液検査では「フリー(遊離型)テストステロン」の値を計測しますが、こちらは起床時をピークに日中変動し午後には低下していくため午前中の検査が望ましいです。

基本的にはどの診療科でも検査は可能ですが、一般の健康診断などでは測定されないことが多いため、専門的なアドバイスや治療を受けられる男性更年期専門外来やメンズヘルス外来などでの検査をおすすめします。当院でもテストステロンの検査は可能です。

テストステロンに関するご相談は当院へ

「専門外来の受診にはちょっと抵抗がある」という男性は少なくないかもしれません。
しかしテストステロンの減少による様々な症状は放っておいても改善はなかなか見込めません。

それよりも悪化していく可能性が高いのです。

精神面の症状が強い場合は「うつ病」や「パニック障害」と診断されたり、性機能の症状によっては泌尿器系の病気と診断されることも多いため、適切な治療のためにはぜひ専門外来を受診しましょう。当院では精神疾患だけでなく、泌尿器系の診療もしておりますので様々な可能性を考慮しつつ、診断することができます。

テストステロンの減少による男性更年期の治療には、ART(アンドロゲン補充療法)というテストステロンを直接補充する方法の他にカウンセリングやストレス緩和のための生活改善指導、食事指導や適切な薬物療法(抗不安薬や性機能改善薬など)個人の症状に合わせて様々な方法があります。

テストステロンの減少は年齢や環境によって変動することが多いため、その時期と状況に合わせて適切に治療していくことが必要です。

まずはお気軽に当院を受診いただければと思います。