夜尿症(おねしょ)の症状別の治療方法について

夜尿症(おねしょ)の症状別の治療方法について

夜尿症は夜間多尿や睡眠深度との関係など、さまざまな原因が考えられます。今回は、夜尿症における一般的な診察の流れや治療内容などをご説明します。

夜尿症の診察の流れ

初診では子どもの身長や体重から、成長障害や高血圧の有無、腹部に便の塊があれば便秘症の恐れなど、疾患につながる可能性のある事項を身体診察を通してチェックすることがあります。日本夜尿症学会のガイドラインによると、初診においては便秘症など、消化管の障害や夜尿を招いている恐れのある疾患の有無を確認することが重要とされ、身体診察を含む詳細な問診、尿検査が必須とされています。夜尿症の初診では、主に以下のような検査を行うことがあります。

問診

内容としては次のような項目が考えられます。

    • 昼間に定期的におしっこにいっているかどうか(6回以上)
  • 昼間におしっこを漏らしたりちびったりすることがないかどうか
  • おしっこをするときは勢いよく一気に出しているかどうか
  • おしっこがくさくないかどうか。尿路感染を以前に起こしたことがないかどうか
  • 毎日ウンチがでているかどうか
  • カフェインを含んでいるお茶や、紅茶、コーラを習慣的に飲んでいないかどうか
  • ご両親にもお子さんと同年齢のころに夜尿症がなかったかどうか
  • 夕方からねる前までの飲水量

尿検査

タンパク尿や血尿がある場合には、腎臓の疾患が隠れている可能性があります。また夜尿症は尿を濃縮する抗利尿ホルモンの分泌低下により起こる場合があるため、どの程度尿が濃縮されて作られているのかを調べることがあります。また糖尿病や潜在的な尿路感染症のスクリーニングができるといわれています。

超音波検査

腎臓や膀胱の状態や残尿を調べるために行う場合があります。また超音波検査などの画像検査は、昼間のお漏らしが重症の場合などに行われることがあります。 初診後は排尿記録などをもとに、多尿型・膀胱型・混合型・正常型の夜尿症のタイプを診断し、一人ひとりに合った生活指導や治療を開始すると考えられます。

夜尿症の改善策

夜尿症の治療において、生活指導や行動療法が重要だと考えられ、主に以下のようなものが挙げられます。

【生活指導】

規則正しい生活をする

夜尿症の治療は、生活習慣の改善から開始することが知られています。起床時間や就寝時間、食事の時間などを決めることにより、生活リズムが整い、睡眠や排便のリズムもつきやすいでしょう。

水分、塩分摂取を控える

水分摂取量が多いと、夜尿症の程度がひどくなることが考えられます。また塩分の摂りすぎは喉の渇きを招き、水分摂取量の増加が尿量増加につながります。夜尿症は午後から夕方にかけて水分摂取量が増加しているケースがあるため、就寝2時間前から水分摂取を控えるようにしましょう。

就寝前にトイレへ行く

尿意の有無に関係なく、寝る前にトイレに行って排尿する習慣を身につけることが夜尿症の予防につながるといわれています。

夜中は無理に起こさない

寝ている間は抗利尿ホルモンの作用により、尿の量を減らしていると考えられています。夜間に起こすと睡眠のリズムが乱れ、抗利尿ホルモンの分泌に悪影響を及ぼすといわれています。

便秘に注意する

便秘になると膀胱が圧迫され、膀胱の容量が少なくなり、夜尿症の原因につながっている可能性があります。根菜類などの野菜や海藻類など、食物繊維を意識して摂るように心がけましょう。

睡眠中の温度管理を行う

体の冷えは尿量を増加させ、膀胱の収縮を招きます。夏はエアコンの効きすぎに注意し、冬は靴下を履く、下着を重ねるなどの寒さ対策を行いましょう。

【行動療法】

夜尿がなかった日のご褒美

昼間のお漏らしの有無、就寝中の夜尿の有無や尿量などを記載する排尿日誌を用いることによって、子どものやる気につながる可能性があります。夜尿がない日が続いた場合にご褒美を与えることで、より治療への意欲を高めると考えられます。失敗した日に罰を課すことは逆効果との指摘があるため、注意しましょう。

水分摂取制限

朝~午後の早い時間に水分摂取を重点的にすることで、夜の水分摂取の欲求を少なくできる可能性があります。就寝2時間前から水分摂取を控えるなど、日中の水分摂取をこまめに行うようにしましょう。

排尿訓練

可能な限り排尿を我慢し、排尿するまでの時間を少しずつ延長することによって膀胱容量を大きくする試みの膀胱訓練、一定の時間で排尿する定時排尿法などがあります。膀胱訓練は世界的にみても一般的に行われているとされる治療法ですが、先天性の腎尿路異常の合併がある場合など、膀胱機能に障害がある場合には推奨されていません。

夜尿症の治療

生活指導や行動療法による改善を3~6ヵ月程度行っても効果がみられない場合、主に以下のような治療を併用して行うと考えられます。一人ひとりの状態に応じ、多尿型・膀胱型・混合型のそれぞれで治療法が異なり、混合型の場合には多尿型・膀胱型の両方の治療を行うことがあります。

【多尿型】

夜寝ている間は抗利尿ホルモンの分泌が増加することにより、尿量を減らし、昼間の60%程度まで尿量が減少するといわれています。抗利尿ホルモン剤での治療は、排尿や水分摂取の指導、ご褒美を与えることなどによって夜尿症に改善がみられない6歳以上の子どもに最も勧められている第一選択薬として知られ、点鼻薬と経口薬があります。副作用として、主に低ナトリウム血症や水中毒があり、後者は水分の多量摂取後に抗利尿ホルモン剤を使用することとの関係が指摘されているため、水分の多量摂取後は使用しないことが注意点として考えられます。用法・用量を守り、医師や薬剤師の指導の下、正しく使用するようにしましょう。

【膀胱型】

抗コリン薬

抗コリン薬による治療は、一般に昼間のお漏らしや頻尿などに対して有効であるとされています。ただし頻尿などがみられない場合でも、抗利尿ホルモン剤による治療との併用により、抗利尿ホルモン剤のみの治療と比較して効果が期待できるといわれています。国際小児尿禁制学会のガイドラインによると、最も推奨されている抗利尿ホルモン剤による治療や後述するアラーム療法に効果が乏しい夜尿のみ症状があらわれる症例に使用が推奨されています。主な副作用として、残尿の増加と便秘があり、前者は尿路感染症の懸念、後者は夜尿の効果が弱まる可能性があります。そのため、便秘がある場合には抗コリン薬による治療の前に緩下薬の使用が推奨され、適切な排尿習慣を身につけることも大切です。用法・用量を守り、医師や薬剤師の指導の下、正しく使用するようにしましょう。

アラーム療法

アラーム療法は子どもの使用するパンツにセンサーをつけ、パンツが濡れたときにアラームが作動して子どもを起こすことにより、尿意でトイレに行けるようになること、睡眠中の膀胱容量を増加させることを目的とした治療法です。アラーム療法は排尿や水分摂取の指導、ご褒美を与えるなどの行動療法で改善がみられない場合に最も推奨される治療法のひとつとされています。また週に3日以上の夜尿がある場合や、本人と家族が積極的に治療を望んでいる場合に効果が得られやすいといわれています。

夜尿症の治療で心がけること

夜尿症の治療の原則は、「起こさない、焦らない、怒らない、ほめる、比べない」ことであり、本人の性格や親の育て方などは症状の発現に関係ないと考えられています。夜尿によって子どもを怒ることなく温かく見守り、自分を責めないようにしましょう。また兄弟やクラスメイトと比較することが子どものストレスとなり、抗利尿ホルモンの分泌に影響を与え、夜尿症を悪化させる恐れがあります。他の人と比較せず、夜尿がなかった日は子どもをほめるなど、治療への意欲を高めることが望ましいでしょう。

夜尿症の治療は一人ひとりの症状に応じて行われる

夜尿症の治療は生活指導や行動療法から開始され、症状の改善がみられない場合に薬物療法やアラーム療法などの積極的治療を行うことがあります。 当院は泌尿器科、心療内科・精神科を併設しているため、あらゆる側面からの治療が可能です。お気軽にご相談ください。