男性に性欲低下がみられる原因と男性更年期障害

男性に性欲低下がみられる原因と男性更年期障害

「パートナーに対する興味関心が薄れてきた」「性欲が落ちてきた気がする」と感じることはありませんか。疲れなどによる性欲低下が一時的にみられることはありますが、長期間に及んでいる場合などは、男性ホルモンの低下や薬の服用などさまざまな原因が考えられます。今回は、男性の性欲低下が起こる原因や男性更年期障害の症状、治療法などをご説明します。

性欲低下の原因
男性の性欲低下の原因として、主に以下のようなものが考えられます。

不安やストレスなど心理的なもの
ストレスはもともと外部からの刺激によって起きる緊張状態のことを指します。外部からの刺激は、騒音や寒暖の変化などの環境的要因、仕事の多忙さ、人間関係が上手くいかないなどの社会的要因、病気や過労などの身体的要因、不安や悩みなどの心理的要因の4つにわけられます。日々の変化が刺激となるため、昇進や結婚などもストレスの原因として考えられ、過度なストレスによって心身のバランスに支障をきたすことがあります。その中の一つの症状として性欲低下がみられることがあり、男性女性問わず起こることがあります。一般的に、完璧主義や物事を一人で抱え込みやすい人などはストレスを溜め込みやすいといわれています。

薬の服用
男性型脱毛症は男性ホルモンが影響しているとされる脱毛症で、外用薬と内服薬の治療が一般的です。男性型脱毛症の治療薬で効果的といわれる、フィナステリドやザガーロの副作用として、性欲低下などがみられることがあります。また抗うつ薬の服用による副作用によって性欲低下や勃起不全を起こす場合もあります。前立腺がん治療において、放射線治療や手術などが難しい場合などに行うことのあるホルモン療法により、性欲低下がみられることがあると考えられています。

慢性腎臓病、高プロラクチン血症など
腎硬化症や慢性腎炎などの慢性腎臓病で腎機能が少しずつ低下した場合に、性欲低下を引き起こすことがあると考えられています。脳下垂体から過剰にプロラクチンが分泌される高プロラクチン血症は、脳下垂体の良性腫瘍、睡眠薬や胃薬などの薬の服用など、何らかの原因によって発症することがあります。男性が高プロラクチン血症になった場合、性欲低下や勃起不全を引き起こすケースがあるといわれています。

男性ホルモンの低下
男性ホルモンの低下によって体内のホルモンバランスが崩れ、性欲低下が起きることがあります。男性ホルモンの低下によって起きる男性更年期障害になると、心身にさまざまな症状が現れると考えられています。男性更年期障害は「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」とも呼ばれ、主に40歳代以降に目立ち始めます。ただし男性ホルモンが低下する期間や程度、その時期に個人差があるため、中には60歳、70歳になってから症状を訴える方もいます。

 

男性更年期障害は男性ホルモンの低下が原因
男性更年期障害は加齢のほか、男性ホルモンのテストステロンが低下することによって引き起こされると考えられています。一般的に男性ホルモンは20歳代をピークとして少しずつ分泌量が低下しはじめ、加齢とともに低下しますが、ストレスなど外的要因によっても減少するといわれています。

男性ホルモン(テストステロン)は脳からの指令の下、約95%は精巣、残り約5%が副腎で合成され、血液中に分泌されています。血中のテストステロンのほとんどは性ホルモン結合グロブリンと結合して活性がなく、実際に作用して性機能を正常に保つはたらきなどを担うのは「遊離型テストステロン」と考えられています。遊離型テストステロンは男性更年期障害の診断に用いられ、総テストステロンと比較し、年を重ねるにしたがって減少しやすい傾向があります。

男性ホルモンの中で大部分を占めるテストステロンは、生殖機能の維持をはじめ、筋肉や骨を強くする、脳機能を高めるなどのはたらきがあり、男性にとって重要なホルモンです。また、やる気や幸福感に関与するドーパミンの生産を促進するなど活気ある生活を送るために必要とされています。テストステロンの分泌は加齢に伴い少しずつ低下します。減少するスピードや時期には個人差がありますが、ストレスが大きな要因と考えられています。40歳代~60歳代、仕事や家庭、親の介護などさまざまなストレスがかかりやすい時期かもしれません。実際、40歳以降は症状に悩む方が多くなります。

さらに近年では、男性更年期障害が脳卒中や心筋梗塞をはじめ、認知症やうつ病などのリスクを高めていることもわかってきています。

 

男性更年期障害の症状
男性ホルモンは全身に作用しているため、テストステロンが低下することによって心身に、さまざまな症状が現れると考えられています。症状や程度には個人差があり、血中の男性ホルモン値が基準値以下でも発症しない場合もあります。女性の更年期障害はホルモンバランスが安定してくると症状が落ち着くことがほとんどですが、男性更年期障害は長期にわたって症状と付き合い続ける可能性が高いことも特徴です。そのため、男性更年期障害は症状を見極め、総合的に診断することが重要とされます。症状には性欲低下のほか、主に以下のようなものが考えられます。

身体症状
・筋肉痛や筋力低下</li>
・頭痛
・勃起不全(ED)
・めまいや耳鳴り
・頻尿
・肥満
・骨粗しょう症
・呼吸困難
全身倦怠感

精神症状
・イライラ
・不安
・睡眠障害
・記憶力や集中力の低下
・無気力
・気分の落ち込み
・疲れやすい

 

男性更年期障害の治療
症状から重症度を確認した上で、遊離テストステロン値を測定後、その値が低下している場合にホルモン補充療法を行うことがあります。経口剤、皮膚吸収剤、注射剤などがあります。

前立腺がんを罹患している場合、ホルモン補充によって病気を悪化させてしまう可能性があるため、男性ホルモン補充療法は禁忌とされています。また、日常においては、生活習慣の改善も合わせて行うと、より効果的です。

治療は短い期間で終える方もいれば、数十年にわたって投与し続ける方もいます。効果には個人差がありますが、筋肉量や骨密度、気分や性欲低下の改善などが期待でき、注射直後から効果を実感できる場合もあります。また、皮膚色調変化、肝機能障害、精巣萎縮、精子減少、脱毛多血症などの副作用の可能性もあるため、医師と十分な相談の上、治療を進めて下さい。

気になる症状がある方は、お気軽に当院へご相談ください。