粉瘤の原因と治療法について

粉瘤の原因と治療法について

(監修:マオメディカルクリニック 皮膚科医 野村尚志)

粉瘤はアテロームとも呼ばれ、皮膚の下にできる腫瘍の中で最も多いとされる疾患のひとつです。今回は、粉瘤の原因や治療法、手術後の注意点をご説明します。

粉瘤とは

粉瘤は皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に皮膚から剥がれ落ちるはずの垢や皮脂がたまってできる出来ものです。中に溜まっているものは脂肪ではなく、垢や皮脂であり、脂肪細胞の塊である脂肪腫とは異なる出来ものです。皮膚の下にできた袋はもともと皮膚の一部であり表皮と同じ構造になっています。

粉瘤は基本的に良性の皮膚腫瘍です。垢や皮脂は袋の中に少しずつたまっていくため、時間の経過によって徐々に大きくなります。また内容物が変性すると黒色や黄色などに変化する場合があります。老若男女問わず、清潔にしていても発生する可能性があります。あらゆる体の場所に出来ますが、特に顔や耳の後ろ、首や背中などに出来やすい傾向にあります。

粉瘤は、主に以下のような特徴を持っています。

  • 中央部に黒い点の開口部がある
  • 圧迫などの刺激によって潰れ、ドロドロとした臭いのある物質が排出される
  • 細菌がついて、感染や炎症によってはれることがある
  • 放置していても無くならない
  • 基本的に自覚症状はないが、炎症が発生した場合は痛みを伴う

粉瘤の症状

皮膚の下に小さな丸いこぶができ、少しずつ大きくなります。丸いこぶの中央には黒い点がみられ、周囲を刺激すると穴からドロドロとした内容物が出てくることがあります。無理に潰そうとすると、炎症を起こしてしまうことがあります。

炎症を起こしたものを炎症性粉瘤といい、中央の開口部から細菌などが侵入し、化膿して赤くはれることがあります。基本的に袋が残ったままだと再発する可能性があります。

粉瘤の原因

粉瘤の原因は明確になっていませんが、外傷などの刺激などにより、毛穴の皮膚に近い部分がめくれて皮膚の下に袋状の構造物ができると考えられています。また、毛の生え際のつまりやウイルス感染などによっても生じるという説もあります。

粉瘤の原因はまだ完全に解明されておらず、有効な予防法はありません。粉瘤は自然治癒することは少なく、徐々に大きくなる可能性があります。首や背中など普段目の届きにくい部位に出来た粉瘤は、鏡を使用して確認したり時々触って確かめると早期発見につながります。

粉瘤の治療

炎症、感染がみられる場合は、抗生物質の飲み薬によって治療を行います。重度の炎症がみられ、袋の中に膿が溜まった場合は、膿を外へ出すために切開排膿処置を行い、炎症が落ち着いた後に粉瘤を摘出する場合があります。

手術を行う場合は部位や大きさなどを総合的に判断し方法を決定します。粉瘤の大きさや炎症の有無によっては入院が必要になるケースもあり総合病院へ紹介となることもあります。

粉瘤は良性腫瘍のため、切除するかどうかは患者さんご本人の希望が優先されますが、放置することによって大きくなる、炎症を起こすなどのリスクがあるため、早期に手術をした場合が良いことがあります。一般的に行われている手術法は、以下のような通常の摘出術と、くり抜き法などです。

摘出術

表面の皮膚を切開して袋と一緒に取り出して、傷口を縫合します。比較的大きい粉瘤もこの方法で手術が可能で、内容物の取り残しがなく根治的な治療です。粉瘤の大きさによっては傷跡が目立つ場合があります。

くり抜き法

くり抜き法はトレパンという特殊な器具で粉瘤の中心に4~5mmほど丸く切開し、内容物を絞り出して取り除く手術方法です。

傷口が小さいため、縫合しないで済むこともあり、切開法と比較して傷跡が目立ちにくく、数分~10分程度と短時間で終えられる場合が多いとされます。一方、癒着が強い粉瘤などには手術できないことがあり、小さな穴から袋を取り出すため、周囲の組織と癒着している部分に取り残しが発生することがあります。取り残した場合、再発のリスクがあります。

術後は、3~5日程度は少量の血が滲むことがあります。術後に傷口に充てるガーゼや傷口を覆う絆創膏を必要に応じてドラッグストアなどで購入し、貼り替えていただきます。シャワーの際はガーゼを剥がし、石けんで優しく洗ってしっかりと洗い流しましょう。

手術後の注意点として、主に以下のようなものがあります。

入浴

問題なければ手術翌日にはシャワーを浴びることが可能です。浴槽での入浴は傷口の細菌感染や出血をまねく恐れがあるため避け、目安として抜糸するまでの1週間程度はシャワーで済ませましょう。

運動や飲酒

出血する恐れがあるため、術後48時間の運動と飲酒は控え、激しい運動は1週間程度行わないようにしましょう。また可能であれば1週間程度は飲酒しないことが望ましいでしょう。

粉瘤は早い段階で切除することが望ましい

粉瘤は痛みや腫脹を伴わない場合もあり、そのままにしておくケースもあります。しかし粉瘤は少しずつ大きくなり、炎症や痛みが出てくることがあるため、早いうちに手術を行うことで、そういった事態を防ぐことが出来ます。

粉瘤でお困りの際は、当院へご相談ください。