(マオメディカルクリニック 院長 植月 俊介 監修)
うつ病を治療するには病気としっかり向き合い、適切な治療を受けることが大切です。うつ病の治療が長引くと、気持ちが焦り、「自分の病気は治るのだろうか…」不安になりますよね。
この記事では、近年のうつ病の傾向とうつ病が長引く原因などについて取り上げます
うつ病の患者数は増加傾向
日本において、うつ病の患者数は増加傾向にあります。厚生労働省の「平成29年(2017)患者調査の概要」によると、統合失調症や気分障害などの精神疾患を患っている人は206万人といわれています。1うつ病を患っているものの精神科を受診しない人も多く、実際に病を患っている人の数は調査結果よりも多いと言われています。2
1厚生労働省「平成 29 年(2017)患者調査の概況」:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/kanja-01.pdf
2厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/07/03.html
うつ病は長期化することも多い
うつ病は治すことができる病気です。基本的には、1~2年程度の治療で改善されますが、人によっては長期化する場合があります。「精神保健医療福祉のデータと政策」によると、うつ病患者の20~30%が長期化しており、5年以上、治療を続けている人もいます。うつ病の症状が長引くことを「うつ病の遷延化(せんえんか)」と呼び、現代のうつ病の特徴の一つです。
うつ病が長引く原因はいくつかあります。原因を知っておくことが、症状を和らげるための第一歩です。
うつ病が長引く原因
うつ病の症状が長引いていると感じている方は、以下をチェックしてみてください。
薬の服用方法が間違っている
一般的にうつ病の治療には薬が使用されます。重要なのは担当医の指示通りに服用することですが、患者自身で服用の期間を短縮したり、決められた量を守らない場合、症状が長期化する可能性があります。うつ病の回復には波があるため、症状が緩和されたと自己判断して、服用を中断する人もなかにはいます。うつ病を改善するには、薬を正しく服用することが大切です。
別の病気の可能性も
気分の浮き沈みや倦怠感などから「うつ病」と診断されたものの、実は双極性障害や統合失調症だったという事例もあります。また更年期障害も鑑別としては重要な疾患になります。特に双極性障害は、躁状態とうつ状態が交互にやってくるため、詳細な生活歴の把握、注意深い観察と問診が大切で、うつ病との違いを判別するのは難しいといわれています。
治療は症状にあった治療方法が不可欠です。実はうつ病ではないのに治療を続けている場合、根本的な治療にはつながらず、症状が長引いてしまう可能性があります。薬を長期間服用しているものの改善が見られない場合は、うつ病ではない可能性もあるため、治療内容の変更などを主治医やセカンドオピニオンの病院・クリニックに相談してみましょう。
男性更年期障害が原因の場合も
男性の方で自分では「うつ病」と思っていたものの、実は男性更年期障害の可能性もあります。男性更年期障害は30~40代の男性にもみられ、不安やイライラ、不眠や倦怠感などが一般的な症状です。
近年、男性更年期障害に悩む人は増えています。「自分はうつ病だ」と断定する前に、男性更年期障害を発症している可能性について検討してみるのもいいでしょう。
男性更年期障害とうつ病の関係性
男性更年期障害はうつ病とどのように関係しているのでしょうか。詳しく解説します。
男性更年期障害(LOH症候群)とは?
男性更年期障害はLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも呼ばれており、以下のような症状を発症します。
- 睡眠障害
- 体調不良
- 性欲減退
- 集中力の低下
- 抑うつ状態
上記のようにうつ病とよく似た症状が現れるので、うつ病になったと思いこんでしまう人も多いようです。男性更年期障害の治療はうつ病の治療とは異なるため、自分の症状をしっかりと見極めることが重要です。
男性更年期障害を発症する年齢
更年期障害は女性特有のものと思われがちですが、近年、男性の発症率が高くなっています。女性の更年期障害は閉経後に発症することが多いですが、男性更年期障害は30代後半から40代で発症する人もいます。
また、男性の更年期障害は一過性のものではなく、放置しておいて改善されるものではありません。症状が重症化すると、仕事や普段の生活にも大きな影響を与える可能性があります。
男性更年期の原因はテストステロン
男性更年期障害の原因の一つはテストステロンの減少です。テストステロンとは、男性ホルモンの代表格で、男らしい筋肉や骨格、性機能、決断力や脳の機能に影響を与えます。テストステロンが少なくなることによって、人との交流にストレスを感じてしまったり、気力が低下するなど、うつ病のような症状が現れます。しかし、男性更年期障害とうつ病は異なる病気ため、正しい治療を行うことが重要です。
男性更年期障害の治療方法
テストステロンの数値をチェック
まずは男性ホルモンが減少しているのかどうかを確かめることが有効です。テストステロンの数値は採血検査で図ることができ、当院でも検査可能です。男性ホルモンの数値に問題がなければ、うつ病の可能性がありますし、数値が低ければ、テストステロンを補充するテストステロン補充療法を選択する場合もあります。いずれにしても、自分の体の状態を科学的に把握することが大切です。
自分で判断せず専門医に相談
男性更年期障害を発症しているかどうかを判断するには、様々な要素を考慮する必要があります。テストステロンの検査をした結果、男性ホルモンの数値が低かったからといって、男性更年期障害とすぐに診断されるわけではありません。
一人で悩まずに専門医に相談して、最適な治療法を見つけましょう。
まとめ
今回はうつ病が長引く原因について解説しました。以下のような理由が考えられます。
- 薬の服用方法が間違っている
- 「うつ病」ではない別の病気の可能性
- 男性の場合、男性更年期障害の可能性も
自分だけの判断で病気を特定することは難しく、病気の長期化につながる可能性があります。そのため、まずは様々な科目をあつかっている病院・クリニックに相談することが大切です。当院ではうつ病だけでなく、双極性障害などの精神疾患や男性更年期障害の診断・治療が可能です。
まずはお気軽にご相談いただければと思います。
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